北海道環境科学研究センター自然環境部

道東地区野生生物室

道東地区野生生物室とは?

 自然環境部道東地区野生生物室は平成9年6月、釧路支庁の中に開設されました。エゾシカを中心にした道東地域の野生生物の生態や保護管理に関する調査研究を行っています。「エゾシカ保護管理計画」(北海道2002)に基づいた、エゾシカ個体群の生息動向に関する調査や釧路湿原周辺の動物相調査が主要な調査事業となっています。講演や出版物などを通じて、得られた成果の普及啓発にも努めています。

主な事業内容

(1)エゾシカ個体群のモニタリング調査
 エゾシカの生息数の増減傾向を把握するため、ヘリコプターセンサスやライトセンサスを行っています。ライトセンサスは、秋季、夜間にスポットライトを用いてエゾシカをカウントする調査です。ヘリコプターセンサスでは、道内で最大規模の越冬地である阿寒湖周辺や白糠丘陵の上空を飛行し、雪の上のシカを数えます。これらの調査から、群れのサイズや構成、分布構造などを知ることができます。
 道東地域のエゾシカ個体群は増加を続けていましたが、1996年〜1997年以降、減少に転じたことが明らかとなっています。


ヘリコプターから発見したエゾシカの群れ


ライトに映し出されたエゾシカ

(2)エゾシカの生態調査
 エゾシカの生態や生活史を個体レベルで明らかにすることができるテレメトリ調査を行っています。この調査では、生け捕りしたシカに電波発信機を装着・追跡し、個体ごとの季節移動や環境利用および死亡要因などについて知ることができます。これまで、直線距離で100km以上離れた夏と冬の生息地の間を行き来していること、冬に積雪が少なく針葉樹の植生カバーがある地域を越冬地として選択していることなど、多くの知見が得られました。最近は、全地球測位システム(GPS)を利用した新しい調査技術の確立に取り組んでいます。


生け捕りしたメスジカの計測


GPSテレメ用の首輪を付けて放されたメス成獣

(3)釧路湿原周辺の中型哺乳類調査
 釧路湿原周辺で自動撮影をもちいた中型哺乳類の生息状況調査を行っています。自動撮影をもちいることにより、目撃することが困難な動物をより容易に、かつ、より正確に検出することができます。これまでに中型哺乳類ではキツネ、タヌキ、エゾクロテンが撮影されたほか、湿原のほぼ全域に移入種アメリカミンクが生息していることが確認されています。現在主に道央地域を中心に分布域を拡大しつつあるアライグマの釧路湿原への侵入の監視にも役立っています。


撮影されたアメリカミンク


撮影されたエゾクロテン

(4)その他の調査研究
 絶滅危惧種であるオオワシ・オジロワシが、エゾシカの死体を食べたことによって鉛中毒で死亡する事例が発生しています。エゾシカの狩猟活動などが生態系に及ぼす影響を明らかにする視点から、エゾシカの主要な越冬地におけるワシ類の来遊状況などを調査しています。


越冬のため道東に来遊するオオワシの成鳥


シカの死体を採食するオジロワシ亜成鳥

(5)合意形成と教育普及
 エゾシカの保護管理を進めていく上で、管理目標や管理方法についての地域の合意形成が重要です。北海道自然環境課や道東の釧路・根室・網走・十勝支庁と連携をとりながら、調査研究の成果を公開し、各地域のエゾシカ対策連絡協議会において議論を進めています。また、野生動物の実態や保護管理に関する正しい知識を普及するため、印刷物の出版や博物館・大学などにおける講演活動を行っています。

 スタッフ