北海道で繁殖する海鳥個体群のモニタリング

(担当 長雄一)


 海に棲む鳥たちの世界も、もはや人間社会とは隔絶してはいません。人間による繁殖地への捕食者の人為導入、漁網等への混獲あるいはタンカー事故が、海鳥類の生活を脅かす大きな問題とされてきました。また、利尻島のウミネコ繁殖地は、人家に隣接して形成されたため、地域住民に鳴き声等の騒音・糞による汚濁等の生活被害を与える結果となりました。

 現在、環境庁は「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律」の「国内希少動植物種」に基づき、ウミガラス・エトピリカの「保護管理計画」を策定しています。

 当センターにおいても、北海道東部域でのエトピリカの繁殖状況調査に参加あるいは技術的な指導を行っています。その結果、現在は40個体前後が生息していると推察されています。また、北海道大学との共同調査により、既存の文献調査から、北海道で繁殖している海鳥類の概数を以下の通りにまとめました。





 利尻島のウミネコは、地域住民に騒音被害・糞害を与える存在です。このため、有害鳥獣駆除等が行われました。一方で、隣接する天売島では、ウミネコの繁殖数が半減しており、保護の対象となっています。

 ウミネコは移動分散性が高い鳥類であり、駆除を行っても外部から移入個体が多数存在することが推察されます。このため、まずは移動様式について標識調査から把握しました。

 このため、北海道大学農学部・大阪市立大学理学部・利尻島自然情報センター・(財)山階鳥類研究所等の協力体制のもとに、利尻島及び天売島でウミネコにウィングタッグという標識(既存の標識のページ)を付けました。そして、全国から標識個体の情報収集を行いました。装着は2001年・2002年の繁殖期に行いました。利尻島は237個体、天売島は450個体を放鳥しました。

 その結果、3月から7月(繁殖期あるいはその直前)は、利尻島・天売島のある北海道日本海側での再発見記録のみですが、それが8月から11月には北海道全域から、一部個体は本州まで分散することが分かりました。そして、越冬期である12月から2月までは、葉県・岩手県・島根県・鳥取県・宮城県・山口県・茨城県・富山県・秋田県・鹿児島県、さらに韓国でも確認されました。





図 放鳥時期別の再発見された場所の分布


 平成8年度には、環境庁により羽幌町に北海道海鳥センターが開設され、環境庁、北海道や羽幌町のような地方自治体、地域で実際に海鳥保護に関わっている方々を結ぶ'かなめ'の施設ができました。今後はこれらの機関及び現地の方々と協力しながら、北海道の良好な自然環境のシンボルとして海鳥たちの生活の場を確保することについて、調査研究といった面からサポートしたいと思います。