【第11回】

こんにちは。はやいもので、もう夏も終盤です。残り少ない北海道の夏、体調、特に熱中症には十分注意しながらレジャーなどを楽しみたいですね。最近は天気予報やインターネット上でも熱中症に関する情報が増えましたのでこれらを有効に活用したいですね。 日本気象協会や環境省では 熱中症の予測情報を確認できますし、また、消防庁や国立環境研究所の熱中症患者情報サイトでは都道府県別の熱中症による救急搬送人員数を確認することができます。


【日本気象協会  熱中症情報          】  http://www.tenki.jp/heatstroke/
【環境省  熱中症予防情報サイト     】  http://www.wbgt.env.go.jp/
【消防庁熱中症情報                       】  http://www.fdma.go.jp/neuter/topics/fieldList9_2.html
【国立環境研究所  熱中症患者速報】  http://www.nies.go.jp/health/HeatStroke/spot/index.html

ところで、熱中症に対する社会的関心が高まったのは最近数年~十数年前からのことです。 それより過去には熱中症はどの程度発症していたのでしょうか。直感的には、地球温暖化やヒートアイランドがあまり進んでいないので、熱中症になる可能性は今より少ないように思えます。一方でクーラーや扇風機が少ないので逆に熱中症になる可能性は高かったのかもしれません。いったいどちらなのでしょうか。


◆◆◆ 暑熱(熱中症)による国内死者数と夏季気温の長期変動 ◆◆◆
◇◇◇ 著者:藤部文昭(2013) 日本気象学会機関誌「天気」,Vol.60,No.5,P371-381◇◇◇

今回ご紹介する文献(以下、「本文献」という。)は、1909~2011年の人口動態統計資料等を使って,暑熱(熱中症)による国内の年間死者数と夏季気温の変動を調べています.「熱中症による死者数」のカウント方法に注意しながら、本文献をみていくことにしましょう。

【1】「熱中症による死者数」とは?

報道等で取り上げられる「熱中症による死者数」には、人口動態統計によるものの他に救急搬送された熱中症患者の死亡数があるとしています。後者は統計対象が救急患者に限られるため、人口動態統計に比べて値が一桁小さく、注意が必要であるとしています。実際に両者を比べると以下のとおりとなります。

表1 「熱中症による死者数」統計による数値の違い
人口動態(厚生労働省)統計による 救急搬送(消防庁)統計による
2008 569 47
2009 236 16
2010 1731 171
2011 948 73
出典:暑熱(熱中症)による国内死者数と夏季気温の長期変動P372及びP380の記述より作成

人口動態統計による数値は『疾病及び関連保健問題の国際統計分類(International Statistical Classification of Diseases and Related Health Problems、略称:ICD)』中で項目「自然の過度の高温への暴露(X30)」に死因が分類された数値です。
本文献では高温という気象状態による直接の被害に注目する立場から、人口動態統計による数値を「暑熱による死者数」として取り扱い、過去100年にわたる暑熱による死者数と死亡率について分析しています。
なお、厚生労働省(2012)の広報資料にはX30の数値が「熱中症による死亡数」として掲載されているとしています。

【2】暑熱による年間死者数

第1図が1909年から2011年までの暑熱による年間死者数の推移を示しています。

『出典:暑熱(熱中症)による国内死者数と夏季気温の長期変動P374 より』
夏季気温は、気象庁の気候監視に使われている国内17地点のうち、北海道の3地点を除く14地点の7月と8月の月平均値を用い、平年値(1981~2010年の平均値)からの偏差を計算したもの。


第1図より

・戦前から1950年頃までにかけては概して暑熱による死者数は年間200~300人で、その半数を14歳以下が占めていたこと。
・1960年代~1990年代前半は概して年間数十人になったが、1994年からは一転して死者が大幅に増え、その大半は60歳以上(うち過半数は80歳以上)であること。
・暑熱による死者数と夏季気温との相関は戦前及び1960年代~1990年代前半は0.7~0.8と高いものの、戦後1950年代前後の減少期及び1990年代以降は相関が低いこと

など説明しています。また、暑熱による死者数が1994年以降に増加している要因としては、

(a)高齢者の増加
(b)気温の上昇傾向

の他に、1995年のICD更新(ICD-10)によって心不全や急性心不全という記載を原則用いないことにより、「夏季の暑熱環境で発生した死亡について、正確に診断されるようになった」可能性や熱中症への関心の高まりによる診断率の上昇による可能性を指摘しています。

【3】北海道(札幌市)は?

さて、北海道での熱中症の状況はどうでしょうか。ご紹介した文献を離れて国立環境研究所 熱中症患者速報 平成25年度報告書から熱中症の患者数の推移をみてみましょう。この報告書では、主な都市の消防局などの協力を得て、救急搬送された熱中症患者数(沖縄県については県内の主な医療機関を受診した熱中症患者数)を集計しています。


都市別熱中症患者数の年次推移
『出典:国立環境研究所 熱中症患者速報 平成25年度報告書P11 より』


平成25年度都市別熱中症患者発生率
『出典:国立環境研究所 熱中症患者速報 平成25年度報告書P12 より』

札幌市は、熱中症の患者数及び発生率ともに比較都市等の中で一番低いことがわかります。
また、国立環境研究所 熱中症患者速報 平成25年度報告書 第2部 資料【札幌市】では、札幌市の熱中症の発生状況(平成25年度)の詳細が掲載されています。 一部をご紹介すると、

・発生率では、65歳以上及び7~18歳が高い。
・発生場所は、65歳以上は住宅、7~18歳は運動中や学校等野外が多い。

の特徴があることがわかります。このことから、年代別の対策が有効なのかもしれません。


札幌市における熱中症の性別・年齢階級別発生率(人口100万人対)(平成25年度)
『出典:国立環境研究所 熱中症患者速報 平成25年度報告書 第2部 資料【札幌市】P2図1 より』


札幌市における熱中症の年齢階級別・発生場所別患者数(平成25年度)
『出典:国立環境研究所 熱中症患者速報 平成25年度報告書 第2部 資料【札幌市】P8図7 より』

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環境省が2014年6月6日に発表した最新の報告によると、21世紀末において、最高気温が30度を超える真夏日の年間日数は全国平均で10~50日程度増えるとされています。
北日本ほど温度上昇幅が高いと予想され、札幌では4~40日程度の真夏日の増加を予想していますので、熱中症被害への対策は北海道といえども必須といえるでしょう。今のうちから熱中症に対する正しい知識や上記のサイトを利用した危険察知の習慣を身につけておきたいものですね。

(参考1:みずほ銀行2014年6月24日コラム 熱中症とその対策
(参考2:日本国内における気候変動による影響の評価のための気候変動予測について(お知らせ)(環境省報道発表資料、2014年6月6日別添資料P7及びP12)


【今回ご紹介した文献はこちら・・・】
http://www.metsoc.jp/tenki/pdf/2013/2013_05_0015.pdf


【過去の文献紹介】
2014年06月12日 【第10回】  ヒートアイランド監視報告書(平成22年)~気象庁~ 
2014年05月08日 【第9回】  S-8 温暖化影響評価・適応政策に関する総合的研究 2014報告書 ~著者:三村信男(2014) ~
2014年04月10日 【第8回】  気候変化が日本の河川流量に及ぼす影響の予測 ~著者:立川康人ほか(2011) ~
2014年03月13日 【第7回】  気候変動への賢い適応 ~環境省 地球温暖化影響適応研究委員会(2008)~
2014年02月13日 【第6回】  家庭・業務部門の温暖化対策 ~藤沼康実(国立環境研究所)ほか(2008)~
2014年01月09日 【第5回】  結氷する停滞性水域の水質に対する気候変動の影響
2013年12月12日 【第4回】  地球温暖化がスキー場の積雪量や滑走可能日数に及ぼす影響予測-気象庁RCM20予測を用いて-
2013年11月14日 【第3回】  地球温暖化が農林水産業に及ぼす影響評価と緩和及び適応技術の開発 ~農林水産省~
2013年10月10日 【第2回】  気候変動監視レポート2012 ~気象庁~ 
2013年09月12日 【第1回】  地球温暖化予測情報 第8巻 ~気象庁~ 


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