【第12回】

こんにちは。つい最近まで「暑い。」「暑い。」を連呼していたのに、すっかり秋になってしまいました。加齢による影響もあるかと思いますが、時間の流れる早さにびっくりしてしまいます。

今年の8月は豪雨による災害が続いてしまいました。広島では20日未明から1時間に100ミリを超える猛烈な雨が降り、土石流が広範囲にわたって発生、大規模な気象災害となってしまいました。
また、道内でも24日、北海道の西海上に低気圧が接近した影響で、道北を中心に猛烈な雨が降り続き、宗谷管内礼文、利尻富士両町では「50年に1度」(札幌管区気象台)の大雨となり、礼文町で住宅1棟が土砂崩れで倒壊する気象災害が発生してしまいました。

ここ数年は異常気象を思わせる天候が増えており、雨の降り方も変化しているような気がしますね。実際には北海道の雨の降り方の強さに変化はあるのでしょうか?

◆◆◆ 日本における短時間強雨の発現について ◆◆◆
◇◇◇ 著者:田坂郁夫(2013) 社会文化論集 : 島根大学法文学部紀要社会文化学科編,第9巻,P15-P29◇◇◇


今回ご紹介する文献(以下、「本文献」という。)は、1981~2010年の30年を対象期間として、日本列島全域における短時間強雨の発現特性をまとめています。北海道に関する雨の降り方の強さについての特徴を中心にみていきましょう。

【1】雨の強さについて

本文献では、

・時間降水量30mm以上(30mm強雨)
・時間降水量50mm以上(50mm強雨)
・時間降水量80mm以上(80mm強雨)

を降水強度として用いています。実際どの程度の強雨かというと、気象庁の以下の表が参考になります。

『出典:気象庁webページ「雨の強さと降り方」 より』


稚内地方気象台によると8月24日の大雨では、礼文町香深で1時間降水量41.0mmを記録しており、「バケツをひっくり返した」ような雨だったことがわかります。
(参考:平成26年8月26日稚内地方気象台発表 気象速報より

【2】30mm強雨の発生頻度

第1表に地域ごとの観測地点数、観測密度ならびに30mm強雨の発生頻度を示しています。
なお、対象とした観測点は全国のAMeDAS観測点のうち、

・対象30年の80%となる24年以上通年観測を行ってきた地点
・改廃・移設が行われた地点のうち、移動前後の水平距離が概ね5km以下で標高差が50m以内の地点

としています。

『出典:日本における短時間強雨の発現についてP17 より』

30mm強雨の発生は、北海道では196地点で延べ1229回、1地点あたり6.3回となっており、対象期間が概ね30年ですから、平均すると4~5年に1回程度降る、という計算になります。

30mm強雨の発生頻度は北海道が最も少なく、最も高い南西諸島は北海道の20倍以上の頻度で30mm強雨が発生していることがわかります。南で多く北で少ない傾向は他の地域を含め確認でき、このことは短時間強雨の発生に緯度、これに伴う気温の変化、さらにはその結果としての空気中の水蒸気量の多少が関わることを示すとしています。

また、『第2図 降水強度別の短時間強雨発生頻度』から30mm強雨の発生頻度を以下に示します。
短時間強雨(30mm強雨)の発生頻度
『出典:日本における短時間強雨の発現についてP18 より』

上図の特徴としては、

・全体の60%に相当する地点が年1回未満であること。
・年3回以上発生する地点は15%で、多発する地点は少数に限られること。
・九州の中南部から南西諸島にかけての地域、四国の太平洋側地域、紀伊半島南東部の地域、および南アルプス南側から伊豆諸島にかけて多発地点が分布していること

などを挙げています。一方で、北海道から瀬戸内海沿岸にかけて発生頻度1回/年未満の寡発地点が分布し、準多発地点が九州北部から中国地方の西部、山陰から近畿西部、濃尾平野および関東平野の西部地域に分布しているとしています。

【3】30mm強雨の発現頻度の推移

第8図は対象8地域の30mm強雨発現頻度の5年移動平均を示しています。


『出典:日本における短時間強雨の発現についてP25 より』

第8図の特徴としては、

・発生頻度が少ない北海道では周期的変動、長期的変動はともに認められない。
・周期的変動は極大・極小期の出現に若干の差異はあるものの、東北以南の地域に共通して認められた。
・長期的な増加傾向は九州、中四国に特徴的な傾向で、近畿以東や南西諸島などでは認められなかった。

などを挙げています。
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今回ご紹介した文献からでは、北海道における強雨の発現に変化を読み取ることはできませんでした。
他の地域に比較しても北海道は強雨の発生頻度は少ないようです。
しかし、9月は台風シーズン。今年の8月の台風は統計史上最小で、9月はその反動で台風の発生が多い傾向にあるそうですので、心構えはしておきたいところですね。


【今回ご紹介した文献はこちら・・・】
http://www.lib.shimane-u.ac.jp/kiyo/a011/009/002.pdf


【過去の文献紹介】
2014年08月14日 【第11回】  暑熱(熱中症)による国内死者数と夏季気温の長期変動 ~著者:藤部文昭(2013) ~ 
2014年06月12日 【第10回】  ヒートアイランド監視報告書(平成22年)~気象庁~ 
2014年05月08日 【第9回】  S-8 温暖化影響評価・適応政策に関する総合的研究 2014報告書 ~著者:三村信男(2014) ~
2014年04月10日 【第8回】  気候変化が日本の河川流量に及ぼす影響の予測 ~著者:立川康人ほか(2011) ~
2014年03月13日 【第7回】  気候変動への賢い適応 ~環境省 地球温暖化影響適応研究委員会(2008)~
2014年02月13日 【第6回】  家庭・業務部門の温暖化対策 ~藤沼康実(国立環境研究所)ほか(2008)~
2014年01月09日 【第5回】  結氷する停滞性水域の水質に対する気候変動の影響
2013年12月12日 【第4回】  地球温暖化がスキー場の積雪量や滑走可能日数に及ぼす影響予測-気象庁RCM20予測を用いて-
2013年11月14日 【第3回】  地球温暖化が農林水産業に及ぼす影響評価と緩和及び適応技術の開発 ~農林水産省~
2013年10月10日 【第2回】  気候変動監視レポート2012 ~気象庁~ 
2013年09月12日 【第1回】  地球温暖化予測情報 第8巻 ~気象庁~ 


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