【第13回】

こんにちは。8月の礼文、利尻富士両町における「50年に1度」(札幌管区気象台)の大雨に続いて9月も北海道は札幌市などの石狩地方全域、空知と胆振両地方の一部で特別警報が発令されるような大雨となり、札幌市や岩見沢市などの約90万人には避難勧告が出されました。江別市では、大雨の影響で浄水場の能力が低下して断水することになったり、国道 453 号(札幌市南区滝野 ~千歳市支笏湖温泉)及び国道 276 号(伊達市大滝区三階滝町 ~苫小牧市丸山 )では路肩決壊などの被害がでました。苫小牧では1時間雨量が100.0mmを記録し、前回(第12回)ホームページに掲載した気象庁の表で言えば「息苦しくなるような圧迫感がある、恐怖を感ずる」猛烈な雨でした。 このような豪雨を含む自然災害の対策は、直接的には住民とつながりがある基本自治体が担うことになります。北海道では2009年に「北海道防災基本条例」が制定され、災害に強い地域社会の実現が求められていますが、その実現のためにはどのようなことが重要となるのでしょうか。


◆◆◆ 北海道における 集落の地域防災力評価手法に関する研究 ◆◆◆
◇◇◇ 著者:南慎一 他(2009) 北海道立総合研究機構 建築研究本部 北方建築総合研究所 調査研究報告 No254 ◇◇◇


今回ご紹介する文献(以下、「本文献」という。)では、大規模災害発生時に道路や海上交通による外部アクセスが遮断されてしまって通行や物資の輸送ができなくなる可能性のある集落の地域防災力の評価手法について検討しています。検討にあたっては、調査対象地域の役場の防災担当者から自主防災活動の実情や町内会の活動状況などの聞き取り調査も行っていますのでみていきましょう。
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本文献では、交通アクセスの被害などにより孤立の恐れのある中山間地域の農業集落などを対象としています。平成17年度に内閣府が行った「中山間地等の集落散在地域における孤立集落発生の可能性に関する状況調査」によると、北海道の農業集落3,123のうち385集落が孤立発生の可能性があると指摘しています。農業集落の孤立の要因としては、「地震、風水害に伴う土砂災害による道路構造物の損傷、道路構造物への土砂堆積」、つまり地震や大雨による土砂崩れなどによる交通アクセスの寸断が91%と最も多くなっています。(図2-12)

『出典:北海道における集落の地域防災力評価手法に関する研究P7 より』


本文献では、孤立の可能性のある農業集落を持つ市町村の中から以下の6町14集落を調査対象とし、役場の防災担当者から聞き取り調査を実施して地域防災力に係わる道内集落の実態調査・分析を進めています。(図3-2)
(なお、せたな町は、1993年北海道南西沖地震時に津波による孤立を経験した集落を持つ漁業集落として調査対象地域としています。)
『出典:北海道における集落の地域防災力評価手法に関する研究P10 より』

14の集落の実態調査より、地域防災力の評価指標案を表4-6にまとめています。評価指標案では、

①孤立に関わる災害危険度(集落の孤立に関わる想定災害を評価)
②集落の地域防災力(災害に対応する地域の防災活動を評価)

の2軸を評価指標としています。
①を縦軸に、②を横軸にとって先ほどの14集落を評価したものが図4-15になります。
『出典:北海道における集落の地域防災力評価手法に関する研究P48 より』

①孤立に関わる災害危険度は「他地域との道路の接続本数」「役場からの距離」など8項目を評価し、AからEの5段階((図では上ほど災害危険度が高い)で評価しています。
また、②の集落の地域防災力は以下の4項目を総合的に評価して0.00~1.00(点数が高いほど、図では右ほど防災力が高い)評価しています。

・「人的資源」~世帯数や年齢構成など
・「地域活動度」~自治会や地域行事の活動状況、消防団や水防団の有無など
・「防災計画」~避難誘導や安否体制の有無など
・「施設基盤」~安全な避難場所の有無など

このように評価することによって地域による違いがわかりますね。例えば足寄町の上螺湾、螺湾は想定される複数の災害への対応が必要なため危険度が高いが、比較的地域防災力が低いとしています。

本文献では、このような評価手法に基づいて自治体が集落を評価し、集落の防災対策の方向性や対策実施の優先的な地域の把握に活用できるとしています。
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自然災害といえば、2014年9月27日に御嶽山が噴火し、大勢の死者が出る痛ましい事態となってしまいました。北海道でも31(うち北方領土が11)の活火山があり、このうち十勝岳や樽前山、駒ケ岳など9火山は、火山噴火予知連絡会が「火山防災のために監視・観測体制の充実が必要な火山」に選定しています。
自治体の防災対策は、気候変動に関係する豪雨や洪水などに対する対策の他にも、気候変動に関係しない地震や津波、火山の噴火などへの対策も考えなければならず、大変な業務ですね。

【今回ご紹介した文献はこちら・・・】
http://www.hri.pref.hokkaido.jp/reports_db/pdfs/H20/254.pdf


【過去の文献紹介】
2014年09月11日 【第12回】  日本における短時間強雨の発現について ~著者:田坂郁夫(2013)~
2014年08月14日 【第11回】  暑熱(熱中症)による国内死者数と夏季気温の長期変動 ~著者:藤部文昭(2013) ~ 
2014年06月12日 【第10回】  ヒートアイランド監視報告書(平成22年)~気象庁~ 
2014年05月08日 【第9回】  S-8 温暖化影響評価・適応政策に関する総合的研究 2014報告書 ~著者:三村信男(2014) ~
2014年04月10日 【第8回】  気候変化が日本の河川流量に及ぼす影響の予測 ~著者:立川康人ほか(2011) ~
2014年03月13日 【第7回】  気候変動への賢い適応 ~環境省 地球温暖化影響適応研究委員会(2008)~
2014年02月13日 【第6回】  家庭・業務部門の温暖化対策 ~藤沼康実(国立環境研究所)ほか(2008)~
2014年01月09日 【第5回】  結氷する停滞性水域の水質に対する気候変動の影響
2013年12月12日 【第4回】  地球温暖化がスキー場の積雪量や滑走可能日数に及ぼす影響予測-気象庁RCM20予測を用いて-
2013年11月14日 【第3回】  地球温暖化が農林水産業に及ぼす影響評価と緩和及び適応技術の開発 ~農林水産省~
2013年10月10日 【第2回】  気候変動監視レポート2012 ~気象庁~ 
2013年09月12日 【第1回】  地球温暖化予測情報 第8巻 ~気象庁~ 


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