【第14回】

11月26日(水)、法政大学で気候変動適応シンポジウム「地域における気候変動適応策の離陸に向けて」が開催されました。 これは、地方自治体における温暖化影響や適応策についての研究の推進や計画の立案についてのノウハウの共有、人事交流や普及啓発などを目的とした「気候変動適応社会をめざす地域フォーラム」(略称:地域適応フォーラム)の第4回目の会合で、環境省環境研究総合推進費「S-8 温暖化影響評価・適応政策に関する総合的研究(以下、S-8)」の一環として実施されました。


【参考】
http://www.adapt-forum.jp/meeting/notice141126.html

本シンポジウムでは、S-8の委託研究を実施するなど先行して温暖化影響や適応策についての取り組みを進めている埼玉県や長野県の取り組み事例なども報告されました。

今回は先進事例のうち、長野県の取り組みについてみていくことにします。2015年度に国の適応計画が閣議決定される予定であることもあり、将来の北海道の適応策の具体的な取り組みへの参考としましょう。

◆◆◆ 長野県における適応策立案手法開発のための検討報告書 ◆◆◆
◇◇◇ 著者:長野県環境保全研究所(2012) ◇◇◇


2010年から始まったS-8は、都道府県などの自治体スケールを対象とした詳細で精度の高い温暖化影響予測の提供と、自治体行政に応用できるような適応策の立案手法の開発が主要の課題となっています。
長野県はこのS-8に参加し、

・長野県における温暖化の実態及び予測
・山岳生態系の影響評価
・市民参加による温暖化影響モニタリング手法の開発
・適応策の立案手法の開発

を「信州クールアース推進調査研究事業」と位置づけて、長野県内外の研究機関と連携して研究を実施しています。

【1】長野県に温暖化影響の実態及び予測
長野県では、温暖化の実態を把握するため気象庁などの気象資料のほとんど得られない山岳地域を独自に8ヶ所選定し、気温等の観測を1996年から開始しました。「信州クールアース推進調査研究事業」では、この観測を継続してデータを蓄積しています。(図2)
『出典:長野県における適応策立案手法開発のための検討報告書P5 より』

また、山岳地(木曽駒ヶ岳)におけるハイマツの1年間の枝の伸びる長さ(年枝伸長量)を計測を実施し過去30年間において有意な増加傾向があることから、木曽駒ヶ岳においても夏季気温が上昇傾向にあることが推定されるとしています。(図3)

【2】市民参加による温暖化影響モニタリング手法の開発
温暖化影響の現れ方は、地域によって異なることから、適応策は地域の実情にあった形で実施される必要がありますが、その際、地域住民の積極的な参加が重要となります。このため、長野県では、適応策に市民の参加をしていただく方法の一つとして地域の温暖化影響モニタリングを市民参加で実施する仕組みを構築中です。(図13)
『出典:長野県における適応策立案手法開発のための検討報告書P18 より』

モニタリングは、一般市民の参加によるものと、野鳥の会など一定の知識を持つ人たちからなる市民団体との連携によるものとの2種類で実施し、データの比較のために研究所による独自調査も実施するとしています。また、得られたデータは県内の影響予測に利用するとともに、普及活動にも活用するとしています。
さらに、webサイト「信州温暖化ウォッチャーズ」を開設して市民からの情報収集と発信についての試行を実施しています。

--
手前みそで恐縮ですが、気候変動適応シンポジウム「地域における気候変動適応策の離陸に向けて」では、私(注:気候文献シリーズ担当者のこと)も「北海道立総合研究機構における戦略的な気候変動適応研究」というタイトルで、発表させていただきました。
内容は道総研における適応策関連研究の事例紹介ということで、戦略研究「地球温暖化と生産構造の変化に対応できる北海道農林業の構築」、及びこの気候変動適応策文献紹介シリーズの活動内容などを紹介させていただきましたが、今回シンポジウムに参加して改めて適応策は関係する機関が膨大で、広く深く取り組む必要のある難しい分野であると感じました。
このシリーズはそのような幅の広い適応策について、将来検討するための土台となることを目的として実施されています。今後ともよろしくお願いします。

【今回ご紹介した文献はこちら・・・】
https://www.pref.nagano.lg.jp/kanken/chosa/kenkyu/coolearth/documents/adaptation_report_nagano120328.pdf


【過去の文献紹介】
2014年10月09日 【第13回】  北海道における 集落の地域防災力評価手法に関する研究 ~著者:南慎一 他(2009)~
2014年09月11日 【第12回】  日本における短時間強雨の発現について ~著者:田坂郁夫(2013)~
2014年08月14日 【第11回】  暑熱(熱中症)による国内死者数と夏季気温の長期変動 ~著者:藤部文昭(2013) ~ 
2014年06月12日 【第10回】  ヒートアイランド監視報告書(平成22年)~気象庁~ 
2014年05月08日 【第9回】  S-8 温暖化影響評価・適応政策に関する総合的研究 2014報告書 ~著者:三村信男(2014) ~
2014年04月10日 【第8回】  気候変化が日本の河川流量に及ぼす影響の予測 ~著者:立川康人ほか(2011) ~
2014年03月13日 【第7回】  気候変動への賢い適応 ~環境省 地球温暖化影響適応研究委員会(2008)~
2014年02月13日 【第6回】  家庭・業務部門の温暖化対策 ~藤沼康実(国立環境研究所)ほか(2008)~
2014年01月09日 【第5回】  結氷する停滞性水域の水質に対する気候変動の影響
2013年12月12日 【第4回】  地球温暖化がスキー場の積雪量や滑走可能日数に及ぼす影響予測-気象庁RCM20予測を用いて-
2013年11月14日 【第3回】  地球温暖化が農林水産業に及ぼす影響評価と緩和及び適応技術の開発 ~農林水産省~
2013年10月10日 【第2回】  気候変動監視レポート2012 ~気象庁~ 
2013年09月12日 【第1回】  地球温暖化予測情報 第8巻 ~気象庁~ 


メールマガジン「北海道環境メッセージ」を読んでみませんか?


『気候変動適応策文献紹介シリーズ』の更新は、北海道庁が発行するメールマガジン「北海道環境メッセージ」(月1回)に合わせて行います。 北海道に興味のある方、気候変動の最新の知見を知りたい方、是非とも登録して頂き、ご愛読下さい。

【登録はこちらから・・・】
http://www1.hokkaido-jin.jp/mail/magazine/

お問い合わせ先

環境保全部 情報・水環境グループ TEL: 011-747-3521(代表) FAX: 011-747-3254 E-Mail: ies(at)hro.or.jp
(迷惑メール防止のため、上記の (at) を小文字の@に変えてください。)
トップページ に戻る
Back to Top