【第15回】

新年あけましておめでとうございます。今年もどうぞ気候変動適応文献シリーズをよろしくお願いします。

地球温暖化対策を話し合う第20回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP20)が2014年12月14日、すべての国が共通ルールに基づいて温暖化ガスの削減目標をつくる方針で一致し、合意文書を採択して閉幕しました。 新しい目標では、途上国の主張も取り入れて、洪水や高潮といった温暖化に伴う被害を抑えるための適応計画または要素を含むように検討することとされたようです。
(参考:http://www.env.go.jp/press/100131.html)
気候変動に対する取り組みは、国際的な取り決めや国の政策ほかに自治体レベルの取り組みも重要とされていますが一部の熱心な自治体だけでは、二酸化炭素は県境や国境に関係なく移動する性質のためにより多くの自治体が連携して主体的に取り組む必要があります。 欧州には、二酸化炭素排出削減を核としつつも、地域の地理的条件や社会経済的な状況を考慮しながら生活の質を高める工夫をし、社会のしくみそのものに踏み込んで低炭素社会の実現を目指す事例が中小規模自治体を中心に広がっています。そしてこれらの活動を支える自治体のネットワークがあるそうです。 欧州は、北海道と気候が似ていますし、参考になることもありそうです。今回は欧州の低炭素社会を目指す自治体レベルの取り組み及び自治体間のネットワークについてみていくことにします。

◆◆◆ 低炭素社会実現を目指す自治体レベルの取組と水平型ネットワークとの関係に関する考察 ◆◆◆
◇◇◇ 著者:高澤由美ほか(2010) 日本建築学会技術報告集,第16巻 第33号 P721-P726◇◇


この自治体間のネットワークは「Transnational Municipal Networks」(以下、「TM'N」と略記。)といい、加盟自治体に情報を発信し相互の意見交換の場を提供するとともに、EUなどの上位機関の政策に働きかけるなどの役割を担っているとされています。

【1】「Climate Alliance」とは?

TM'Nのひとつが「Climate Alliance」です。「Climate Alliance」は1990年に設立され、オーストリアやドイツなど24の欧州諸国から1,700以上(2014年時点)の自治体等が加盟しています。その目的は、5年ごとに二酸化炭素排出量を10%削減することや、1990年を基準として1人当たりの二酸化炭素排出量を少なくとも2030年までに半減させることのほかアマゾンの熱帯雨林や生物多様性の保護にも取り組んでいます。
(参考:http://www.climatealliance.org/home.0.html
TM'Nにはほかにも「Climate Alliance」と活動やサービス内容に共通部分が多い「Energie-Cities」、環境にやさしいモビリティを利用したツーリズムを21都市のネットワークで推進する「Alpine Pearls」や再生可能エネルギーの使用を積極的に行う自治体をサポートする「European energy gold」などがあるとしています。

【2】「Climate star」賞

この「Climate Alliance」は、二酸化炭素排出削減に取り組む自治体のうち特に優秀な自治体を対象に「Climate star」という賞を贈呈しています。2002年以降、2~3年おきに2014年までに6回の表彰が行われ、延べ107自治体が受賞しています。 (参考:http://www.klimabuendnis.org/666.0.htmlhttp://www.klimabuendnis.org/667.0.html
本文献ではTM'Nが二酸化炭素排出削減に取り組んでいる自治体がTM'Nをどのように活用しているのか検証し、自治体とTM'Nの関係について考察することを目的としていますが、この調査のためにTM'Nの「Climate Alliance」の加盟自治体のうち、2007年までに「Climate star」を受賞した6自治体を調査対象としています。

(左)図1 調査対象都市となった「Climate star」受賞の6自治体の位置
(右)表1 調査対象都市となった「Climate star」受賞の6自治体の概要

『出典:低炭素型社会実現を目指す自治体レベルの取組と水平型ネットワークとの関係に関する考察P722 より』

【3】調査結果

上記の6自治体を対象として、二酸化炭素排出削減の取り組みを始めたきっかけや具体的な対策、及び「Climate alliance」に加入した経緯や活動の効果や「Climate alliance」へ要望することなどを調査しています。このうち、二酸化炭素排出削減の取り組みを始めたきっかけでは、「市長のリーダーシップ」「市民の意見」が主要な要因であること、「Climate alliance」活動を介して得られた事項については、「他地域の活動状況などの情報入手」や「助成金やノウハウに関する情報交換」に進展があったと回答する自治体が多いことから、情報の入手源として重要な役割を果たしているとしています。

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北海道は、風力、太陽光、水力、温泉熱などの自然エネルギーや農林水産資源などのバイオマス資源が豊富にあります。これらの再生利用が可能な資源を有効に利用して、低炭素型の地域づくりをするためには、欧州における「Climate alliance」ような水平型のネットワークや「Climate star」賞といった制度は参考になるかもしれませんね。


【今回ご紹介した文献はこちら・・・】
https://www.jstage.jst.go.jp/article/aijt/16/33/16_33_721/_pdf


【過去の文献紹介】
2014年12月17日 【第14回】  長野県における適応策立案手法開発のための検討報告書 ~著者:著者:長野県環境保全研究所(2012)~
2014年10月09日 【第13回】  北海道における 集落の地域防災力評価手法に関する研究 ~著者:南慎一 他(2009)~
2014年09月11日 【第12回】  日本における短時間強雨の発現について ~著者:田坂郁夫(2013)~
2014年08月14日 【第11回】  暑熱(熱中症)による国内死者数と夏季気温の長期変動 ~著者:藤部文昭(2013) ~ 
2014年06月12日 【第10回】  ヒートアイランド監視報告書(平成22年)~気象庁~ 
2014年05月08日 【第9回】  S-8 温暖化影響評価・適応政策に関する総合的研究 2014報告書 ~著者:三村信男(2014) ~
2014年04月10日 【第8回】  気候変化が日本の河川流量に及ぼす影響の予測 ~著者:立川康人ほか(2011) ~
2014年03月13日 【第7回】  気候変動への賢い適応 ~環境省 地球温暖化影響適応研究委員会(2008)~
2014年02月13日 【第6回】  家庭・業務部門の温暖化対策 ~藤沼康実(国立環境研究所)ほか(2008)~
2014年01月09日 【第5回】  結氷する停滞性水域の水質に対する気候変動の影響
2013年12月12日 【第4回】  地球温暖化がスキー場の積雪量や滑走可能日数に及ぼす影響予測-気象庁RCM20予測を用いて-
2013年11月14日 【第3回】  地球温暖化が農林水産業に及ぼす影響評価と緩和及び適応技術の開発 ~農林水産省~
2013年10月10日 【第2回】  気候変動監視レポート2012 ~気象庁~ 
2013年09月12日 【第1回】  地球温暖化予測情報 第8巻 ~気象庁~ 


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