【第16回】

少し前の話になりますが総務省統計局は2014年12月31日、2015年1月1日現在における「未(ひつじ)年生まれ」の人口と「新成人」の人口の推計データを発表しました。それによれば未(ひつじ)年生まれの人口は1007万人で、新成人の人口は126万人との推計となり、新成人の数は去年2014年と比べると5万人増えた値となったそうです。これは1995年に減少へ転じて以来21年ぶりの増加となるそうです。
【参考:http://www.stat.go.jp/data/jinsui/topics/topi850.htm

北海道や国のあるべき姿を長期的な視野をもって取り組もうとした場合、考慮に入れなければならない大きな変化には「地球温暖化による気候変動」のほか、「人口減少の進行」「急速な少子高齢化」といったものが挙げられます。そしてそれらがどのように推移し、どのような影響があるのか予想した上で適切に対処しなければならないという点においては、「人口減少の進行」や「急速な少子高齢化」は「地球温暖化による気候変動」と同様に厄介であり、「兄弟」のような問題といえるでしょう。

◆◆◆ 「国土の長期展望」中間とりまとめ ◆◆◆
◇◇◇ 国土交通省(2011)◇◇◇


今回ご紹介する文献(以下、「本文献」という。)は、国土交通省の国土審議会政策部会・長期展望委員会が中間でとりまとめた日本の将来予測です。なんとなく「雰囲気」ではわかっている人口減少や地球温暖化に対して豊富な表やグラフを用いて解説しています。

【1】国土の長期展望の趣旨

本文献は、「地球温暖化による気候変動」「人口減少の進行」「急速な少子高齢化」という大きな変化を踏まえた対応が強く求められており、人口、社会、経済、国土基盤、環境、エネルギー、産業等の分野において、国土をめぐる様々な観点から、その影響がどう見込まれるかを長期展望する意義は極めて大きいとしています。そこで、まずは、現状のまま推移した場合について、2050年までの国土の姿(我が国の自然、経済、社会、文化等諸現象の空間的な状況)を定量的・可視的に分かりやすく描き出し、その結果を踏まえ、将来の国土に関する課題の整理・検討を実施するとしています。

【2】2050年の北海道の人口は2005年に比べて43.4%減少する。

本文献の2050年の人口の、北海道に関する予測をみてみると・・・
・2050年の北海道の人口は2005年に比べて43.4%減少(全国では25.5%減少)する。(表1)
   (2005年:563万人、2050年:319万人)
・生産年齢人口に限ると、62.5%減少(全国では41.4%減少)する。
   (2005年:370万人、2050年:139万人)
・人が居住している地点(1kmメッシュ)のうち、52.3%が無居住化する(図1)。(全国平均は約2割)
・高齢化率(高齢人口の総人口に対する割合)は北海道が2005年の21.4%から2050年は50.2%となりプラス28.8%ポイント、全国平均は2005年の20.1%から2050年は39.6%でプラス19.5%と、北海道が全国を大幅に上回る。
・高齢者単独世帯数が44.3万世帯で総世帯数(150.8万世帯)の29.4%を占め、広域ブロック別に全国で最高となる。

本文献では、地域圏は急激な人口減少に加え高齢化率が高まっていくという厳しい環境の中で、生活・産業の基盤の充実、地域の特色を高める方策等などの発展の要素を見極め、それをどのように確保するのか具体的な施策を検討していく必要があるとしています。このことは人口減少と高齢化が特に進むとされている北海道に強く求められているといえるでしょう。
また、無居住化した地域の管理をどのように進めていくのか、その制度のあり方も含め検討が必要としていますが、北海道は2050年に人が居住している地点のうち、約半数が無居住化するという予測です。これは1kmメッシュ単位で集計しているため、もともと人口密度が希薄で散居村の北海道では高い数字が出やすい可能性は考えられますが、他の地域よりも強い意識で対策を考える必要があるでしょう。
表1 広域ブロックごとの人口推計値
『出典:「国土の長期展望」中間とりまとめ 本文≪図表≫P12 より』


図1 広域ブロックごとの無居住化割合
『出典:「国土の長期展望」中間とりまとめ 本文≪図表≫P17 より』

--
上記のような人口減少・高齢化問題を踏まえながら「地球温暖化による気候変動」の適応を考えると、例えば沿岸部のA集落は、将来台風や豪雨のような極端現象による高潮被害対策が、将来人がいなくなってしまうために必要がないという判断もあり得る話となってきます。
農業の面では、夏季の炎天下の作業がさらに地球温暖化によって過酷さを増し、さらにその農業従事者の高齢化が進むことから熱中症対策や機械化などによる農作業の効率化、軽減化が対策として必要でしょう。
また、買い物や防災などの面では、安全な地域にサービス施設や高齢者向け住宅などを配置して集まって住む集住化を進めるような方策も考えられますが、農業など生産活動のための移動距離が増えて温室効果ガス排出量の増加につながる可能性も考えられ、地域づくり全体に関わる問題として考えていく必要があるでしょう。
もちろん、「○○集落址。18××年~20△△年」のような碑がたくさんできてしまうような北海道にはしたくありませんね。


【今回ご紹介した文献はこちら・・・】
http://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/kokudo03_sg_000030.html


【過去の文献紹介】
2015年01月08日 【第15回】  低炭素社会実現を目指す自治体レベルの取組と水平型ネットワークとの関係に関する考察 ~著者:高澤由美ほか(2010)~
2014年12月17日 【第14回】  長野県における適応策立案手法開発のための検討報告書 ~著者:著者:長野県環境保全研究所(2012)~
2014年10月09日 【第13回】  北海道における 集落の地域防災力評価手法に関する研究 ~著者:南慎一 他(2009)~
2014年09月11日 【第12回】  日本における短時間強雨の発現について ~著者:田坂郁夫(2013)~
2014年08月14日 【第11回】  暑熱(熱中症)による国内死者数と夏季気温の長期変動 ~著者:藤部文昭(2013) ~ 
2014年06月12日 【第10回】  ヒートアイランド監視報告書(平成22年)~気象庁~ 
2014年05月08日 【第9回】  S-8 温暖化影響評価・適応政策に関する総合的研究 2014報告書 ~著者:三村信男(2014) ~
2014年04月10日 【第8回】  気候変化が日本の河川流量に及ぼす影響の予測 ~著者:立川康人ほか(2011) ~
2014年03月13日 【第7回】  気候変動への賢い適応 ~環境省 地球温暖化影響適応研究委員会(2008)~
2014年02月13日 【第6回】  家庭・業務部門の温暖化対策 ~藤沼康実(国立環境研究所)ほか(2008)~
2014年01月09日 【第5回】  結氷する停滞性水域の水質に対する気候変動の影響
2013年12月12日 【第4回】  地球温暖化がスキー場の積雪量や滑走可能日数に及ぼす影響予測-気象庁RCM20予測を用いて-
2013年11月14日 【第3回】  地球温暖化が農林水産業に及ぼす影響評価と緩和及び適応技術の開発 ~農林水産省~
2013年10月10日 【第2回】  気候変動監視レポート2012 ~気象庁~ 
2013年09月12日 【第1回】  地球温暖化予測情報 第8巻 ~気象庁~ 


メールマガジン「北海道環境メッセージ」を読んでみませんか?


『気候変動適応策文献紹介シリーズ』の更新は、北海道庁が発行するメールマガジン「北海道環境メッセージ」(月1回)に合わせて行います。 北海道に興味のある方、気候変動の最新の知見を知りたい方、是非とも登録して頂き、ご愛読下さい。

【登録はこちらから・・・】
http://www1.hokkaido-jin.jp/mail/magazine/

お問い合わせ先

環境保全部 情報・水環境グループ TEL: 011-747-3521(代表) FAX: 011-747-3254 E-Mail: ies(at)hro.or.jp
(迷惑メール防止のため、上記の (at) を小文字の@に変えてください。)
トップページ に戻る
Back to Top