【第17回】

春らしい日が多くなりました。今年の北海道の冬(2014年12月~2月)は1月以降寒気の南下が弱く気温の高い日が続き、暖冬となったようです。
【参考:http://www.jma.go.jp/jma/press/1503/02c/tenko151202.html

将来においては気候変動による気温上昇が原因となって融雪期の早期化や積雪減少による融雪水の減少が予想され,それに伴う水利用への影響が懸念されています。
2014年4月にご紹介した文献『気候変化が日本の河川流量に及ぼす影響の予測』では、気候変化が将来の石狩川の流出状況にどのような影響を及ぼすかについて予測した文献でしたが、今回は豊平川の将来の流出状況の変化と利水への影響を推定した文献(以下、「本文献」という。)をご紹介します。
本文献ではさらに、対応策として豊平川上流の2つのダム(定山渓ダム、豊平峡ダム)についての運用方法について検討しています。

◆◆◆ 気候変動による利水への影響を踏まえたダム貯水池群の最適操作に関する研究 ◆◆◆
◇◇◇ 著者:川村一人ほか(2012) 土木学会論文集B1,Vol.68,No.4, I_1477-I_1482◇◇◇

【1】解析対象

図-1が解析対象である豊平川流域です。札幌市民約200万人の水道水源の約98%は豊平川からの取水に依存しています。上流には定山渓ダム及び豊平峡ダムがあり、両ダムともに洪水調節機能及び発電・水道への利水を目的とした多目的ダムであるとしています。


『出典:気候変動による利水への影響を踏まえたダム貯水池群の最適操作に関する研究I_1478 より』


【2】ダムの流入量将来比較

本文献ではまず、気象庁・気象研究所により開発された地域気候モデルRCM20の温暖化予測結果を用いて、現況期間(1981~2000年)と将来期間(2081~2100年)の豊平峡ダム及び定山渓ダムの流入量比較をしています。(図3は豊平峡ダムの流入量将来比較です。)両ダムともに、融雪出水のピークが現況では5月であるのに対して、融雪が早まることにより4月にピークを迎える結果になったとしています。

図-3 豊平峡ダムの流入量比較
『出典:気候変動による利水への影響を踏まえたダム貯水池群の最適操作に関する研究I_1479 より』

【3】ダムの貯水量変化推定

本文献では、「簡易モデル」及び「動的計画法」(Dynamic Programming,DP)によるダムの貯水位と放流量の推定を行っています。動的計画法は複数のダムがある場合に最適な利水操作を求める計算方法で、本文献ではダム単体での最適化を「DP単体モデル」、定山渓ダムと豊平峡ダムの連携による最適化を「DP連携モデル」と定義しています。
図5及び図7はそれぞれ豊平峡ダムの簡易モデルによる現況及び将来の推定結果です。図5の現況推定では全期間で利水放流分の放流操作*1ができています(黒色の点線の実績利水放流量*2を紫色の放流量が上回っている)が、図7の将来推定では、5月以降、流入量が減少した後に、現在と同じ放流量を維持すると、貯水位が急速に低下し、6月中旬以降8月上旬まで、貯水位が最低水位に達して放流ができない日が発生することになってしまいます。

*1放流操作~かんがいや上水道、工業用水の水確保や洪水を防ぐことを目的として、下流への放流量を調整すること
*2実績利水放流量~利水放流としてデータのある1993~2007年の15年間の実績値の月平均値(m3/日)





『出典:気候変動による利水への影響を踏まえたダム貯水池群の最適操作に関する研究I_1479 より』

そこで、「DP単体モデル」によるダム操作での貯水位と放流量の推定を行っています。 図11の「DP単体モデル」による豊平峡ダムの将来推定結果では、6月中旬から8月中旬にかけて放流量が0の日が出現しないように5月6月の放流量を抑えるものの、7月から9月にかけては貯水位(青色の線)が最低水位(下の黒色の実線)近くを推移する結果となり、「DP単体モデル」による操作でも将来的には利水へ支障をきたす可能性が示唆されたとしています。


『出典:気候変動による利水への影響を踏まえたダム貯水池群の最適操作に関する研究I_1481 より』

「DP単体モデル」でのダム操作の問題点を解決するために、「DP連携モデル」での対応策について検討しています。図14は「DP連携モデル」による豊平峡ダムの将来推定結果ですが、定山渓ダムと連携することにより、豊平峡ダムの7月から9月にかけての貯水位の低下を抑制しつつ(7月から9月にかけての最低水位を示す黒色の実線を貯水位を示す青色の線がかなり上回っています。)、下流での水需要を満たすことができるとしています。

『出典:気候変動による利水への影響を踏まえたダム貯水池群の最適操作に関する研究I_1482 より』


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豊平川は札幌市民の「水がめ」であるばかりでなく、河川敷にいろいろな運動施設があってサッカーやテニス、ジョギングなど楽しめたり、さらには花火大会の会場になっていることなどを考えると本当にお世話になっている川だなぁと思います。このような関係が将来にわたって継続するためにも、気候変動による豊平川の気候変動による利水への影響に対して適切に対応していければ良いと思います。


【今回ご紹介した文献はこちら・・・】
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jscejhe/68/4/68_247/_pdf


【過去の文献紹介】
2015年02月12日 【第16回】  「国土の長期展望」中間とりまとめ~国土交通省(2011)~
2015年01月08日 【第15回】  低炭素社会実現を目指す自治体レベルの取組と水平型ネットワークとの関係に関する考察 ~著者:高澤由美ほか(2010)~
2014年12月17日 【第14回】  長野県における適応策立案手法開発のための検討報告書 ~著者:著者:長野県環境保全研究所(2012)~
2014年10月09日 【第13回】  北海道における 集落の地域防災力評価手法に関する研究 ~著者:南慎一 他(2009)~
2014年09月11日 【第12回】  日本における短時間強雨の発現について ~著者:田坂郁夫(2013)~
2014年08月14日 【第11回】  暑熱(熱中症)による国内死者数と夏季気温の長期変動 ~著者:藤部文昭(2013) ~ 
2014年06月12日 【第10回】  ヒートアイランド監視報告書(平成22年)~気象庁~ 
2014年05月08日 【第9回】  S-8 温暖化影響評価・適応政策に関する総合的研究 2014報告書 ~著者:三村信男(2014) ~
2014年04月10日 【第8回】  気候変化が日本の河川流量に及ぼす影響の予測 ~著者:立川康人ほか(2011) ~
2014年03月13日 【第7回】  気候変動への賢い適応 ~環境省 地球温暖化影響適応研究委員会(2008)~
2014年02月13日 【第6回】  家庭・業務部門の温暖化対策 ~藤沼康実(国立環境研究所)ほか(2008)~
2014年01月09日 【第5回】  結氷する停滞性水域の水質に対する気候変動の影響
2013年12月12日 【第4回】  地球温暖化がスキー場の積雪量や滑走可能日数に及ぼす影響予測-気象庁RCM20予測を用いて-
2013年11月14日 【第3回】  地球温暖化が農林水産業に及ぼす影響評価と緩和及び適応技術の開発 ~農林水産省~
2013年10月10日 【第2回】  気候変動監視レポート2012 ~気象庁~ 
2013年09月12日 【第1回】  地球温暖化予測情報 第8巻 ~気象庁~ 


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